成功するゴーストレストラン、失敗するゴーストレストラン

コロナ禍において活発になったフードデリバリー業界。様々な形でのフードデリバリー業態も増え、数年前だと聴き慣れなかった「ゴーストレストラン」という手法も一般化してきました。しかし、このゴーストレストランに関して、失敗事例も同時に増えています。なぜゴーストレストランで成功する企業と失敗する企業がいるのか?今回はゴーストレストランの成否の分かれ目を解説していこうと思います。

その商品はフードデリバリーに適していますか?

フードデリバリーの失敗あるある。それは、ブランドを立ち上げたのに全然売れない(デリバリー売上が月間10万円台に留まってしまう)というもの。実際、デリバリーブランドの大半が月商30万円以下というデータも出ており、如何にデリバリー事業の成功事例の影には失敗事例が多いのかと感じさせられます。

この失敗事例で多い原因は、事業の発想を既存のレストラン商品の延長で決めてしまっているためです。「うちの○○は評判で〜」といった具合に既存商品を新規顧客に売ろうとしてしまいます。しかし、フードデリバリーを頼む利用シーンと、レストランで食べる利用シーンは大きく異なります。

例えば、フードデリバリーにおいて、昼と夜の売上構成比は大体半分半分です。昼のニーズから見ていくと、基本的には「単品完結型」です。単品完結型というのは、その名の通りその一品で食事が完了するというものですね。わかりやすいのが、「カレー」「丼」「弁当」「サラダボウル」「ハンバーガー」のようなものです。このような単品完結型が主流の中で、居酒屋などの業態がフードデリバリーの商品開発をすると、「枝豆」「ポテトサラダ」などの品揃え型になります。これが顧客ニーズとのミスマッチとなり、売れない一つの原因になっています。

次に夜のニーズで見ると、フードデリバリーを頼む客層によって売れる商品が異なります。例えば、既存飲食店が有名で、かつ顧客基盤もしっかりしている場合だと、上述の居酒屋のような品揃え型がむしろ威力を発揮します。複数店舗展開している場合、「一つの電話で全ての業態を楽しめる!」という価値もあります。しかしこれは「既存飲食店が有名で、かつ顧客基盤もしっかりしている」という前提条件あってこそ成立します。残念ながら大半の企業はそれに当てはまらないため、Uber EATSや出前館などのプラットフォームの集客力に頼ることになります。そのような場合、これらプラットフォームの利用者層は単身世帯や二人世帯が中心です。お昼のニーズと同じく、単品完結型の業態の方が好まれます。利用者とその利用シーンを想定して業態を作り、商品開発ができているか。ここは冷静に見極める必要があります。

最後に、商材の市場規模です。東京都内の事例から、すごくニッチな商材の成功事例を聞き、「自社の商圏だとそんなオシャレな事をやっている店舗はない!チャンスだ!」と考え、地方都市でも同じようなニッチ商材を展開される企業も多いです。しかし、ニッチというのは市場規模が小さいという事です。

  売上=MS(一人あたり市場規模)×商圏人口×シェア

上記にて売上が決まってくる中で、東京は単純に商圏人口が圧倒的に大きいというのが特徴です。逆にいえば、商圏人口が多い分、競合プレイヤーも多いため、ニッチでないと差別化を図れないという側面もあります。地方都市の場合、ニッチに行かずとも市場規模の大きい業態で勝てる要素も残っているため、基本的には大きいところから順に進めていくのがセオリーです。

既存飲食店の補填をフードデリバリーで行おうとしていませんか?

コロナ禍の影響を受け、既存店の売上が5割下がってしまった。減少分5割を埋めるためにフードデリバリーを立ち上げ売上を補完したい。そのため、既存店の厨房を活用してゴーストレストランを展開していくというケースも多々あります。これに関しては、半分賛成で、半分反対です。

賛成の理由としては、飲食業のコスト構造を考えると、固定費が重いため売上のトップラインを高めないと赤字になってしまうためです。雇用維持・店舗維持の視点で考えると、「当面の危機を脱する」ためにゴーストレストラン対応で急場を凌ぎ、その後にイートインが回復するならば専門厨房に移転していくのが良い流れと言えます。

反対の理由としては、飲食の既存店でゴーストレストランを行うには、全てにおいて効率が悪いという事です。そもそも、フードデリバリーは製造業の要素が強く、製造動線からの配達動線設計による効率化、三等立地による固定費の圧倒的な圧縮により利益を出しやすい状況にするなどのポイントがあります。しかし、飲食店はあくまでも店舗へ集客するため、立地の良し悪しで家賃なども決まってきます。専門厨房に移転する前提で動いていくなら良いですが、坪家賃が1.5万円を超えてくる場合、あえてそこでデリバリーをやり続けるメリットは小さく、儲かり辛いというのを認識して進めていく必要があります。

自社で顧客管理できる仕組みになっていますか?

3つ目のゴーストレストランの落とし穴として、デリバリーで売ることだけ考えてしまい、顧客管理の重要性を見落としているという点です。本来フードデリバリー事業の最大の資産である顧客情報を得られない仕組みで動き続けていると、プラットフォーム依存が強くなり積み上がりづらい事業モデルになる可能性があります。フードデリバリーにおいて、「集客する」「製造する」「配達する」の3ステップの中で「集客する」「配達する」が大変なのは間違いありません。飲食業が母体だと自社の得意な「製造する」に集中して、「集客」「配達」をアウトソースするのも悪いことではありません。ただ、「集客」「配達」は大変だからこそ差別化要因になるのも事実です。

仮に今のブランドが売れていたとしても、各プラットフォームのアプリのトップ画面から消えれば売上は激減します。そしてプラットフォームに強く依存する中、売上が激減した場合、店側サイドで取れるリカバリアプローチはありません。

だからこそ、最初の立ち上げ〜半年くらいまではプラットフォーム依存で進めても良いですが、それ以降にゴーストレストランを事業化していくならば、「集客する」「配達する」への事業投資も考えるべきオプションです。

集客に関しては、初動のタイミングからLINEやSNSは徹底して強化して母数を増やしておく必要があります。せめて3,000フォロワーくらいまではプラットフォーム以外で戦う時には欲しいところです。

配達に関しては、どんどん外注しましょう。タクシー配達の恒久化に限らず、食のデリバリー強化に動く物流会社もいます。また、各プラットフォームの配達担い手としてのギグワーカーも増えてきています。この辺りは上手く事業提携を進めていき、形にしていきましょう。

顧客ニーズがあるものを作り、効率を最大化できる厨房で製造し、顧客名簿が獲得できる販売チャネルを構築する。これらを徹底的に整備することで、ゴーストレストランを成功に繋げて行き、withコロナ / afterコロナにおける「食」の勝者を目指しましょう。

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  1. フードデリバリーで売れる店舗を作るには?(後編)

  2. フードデリバリーで売れる店舗を作るには?(前編)