フードデリバリーの原価率ってどれくらい?

フードデリバリーを本格的に事業化させていきたいけど、原価率はどのくらいで組めば良いかわからない。また理論原価を決定した後に、具体的な原価コントロールをどうすれば良いのかわからない。この辺りの手法について、今回は書いていこうと思います。

まず前提となる原価率ですが、UberEATSや出前館などのプラットフォームに載せず、自分たちの自社販路・自社配送で展開する上だと「約35%」が一般的な数値となっています。これは食材原価だけでなく包材原価も含んだ数値となり、構成としては「原価35%=食材27%+包材8%」といった感じです。

包材原価が思ったより高いな、と思われる方が多いと思うのですが、実はこの包材原価のコストの掛け方は非常に重要なポイントです。以前複数の企業と実験をしたことがあるのですが、

  A. 食材原価は高いが見た目(包材)がチープ

  B. 原価は下げているが見た目が魅力的

この2パターンの場合、どちらがリピート率が高かったと思いますか?我々も驚いたのですが、Bのパターンの方が圧倒的にリピート率が高いという分析が出ました。

なぜ食材にコストをよりかけた場合よりも、包材にコストをかけた方がリピート率が高まる傾向なのか。理由としては様々あるのですが、お客様へのインタビューをしてみると・・・

  “デリバリーは届いてから開けるまでもワクワクの時間”

  “デリバリーは会議で使うことも多く見た目も重要”

  この2つが圧倒的でした。

商品が届いてから開けるまでのワクワク感は、自分たちがお客様の立場になったときに感じたこともあるのではないでしょうか。どれだけ有名店のデリバリーでも、それがコンビニなどで扱っている安いプラ製品であれば少しガッカリします。イートインならば「料理+器」で演出する事になると思いますが、これがデリバリーだと「料理+包材」になってきます。そのため、包材にコストをかけない=器にこだわらないということと同義語になりますので、確かに満足度が下がりやすい一因でした。

また会議用などの用途でのフードデリバリーでは、注文者と食べる方が必ずしも一致しないこともあります。つまりランチミーティングなどで社内の若手メンバーが数食分一気に購入するイメージです。若手メンバーの立場で考えると、ランチミーティングで提供される食事に対して上司が「えっなにこれ?」この様なリアクションだと大失敗ですよね。「おっ、今日はなんだか凄そうだね」この様なリアクションを引き出すには包材の要素が非常に大切。やはり食材原価は口に入ってからの勝負ですが、食事は口に入る前から勝負が始まるもの。接客や居心地、器で勝負ができないデリバリーの世界だからこそ、やはり包材にはこだわりたいところです。

原価は35%、内訳は食材27%+包材8%を基準として考えていく。しかし事業運営を行っていく上で生じやすいのが「ロス」の問題だと思います。理論原価は35%にも関わらず、蓋を開けてみると38%くらい生じてしまった。この様なフードデリバリーでの原価ロス問題を無くす為に、ロスを減らす5つのポイントを見ていこうと思います。

①廃棄ロス

フードデリバリーはある種製造業の要素も強い為、製品はなるべくストックとして活用される企業が多いです。近年の技術発展により、冷凍やチルドの活用が多くなりました。例えば揚げ物や焼き物であれば急速凍結機を活用するイメージです。

通常の冷凍庫であれば-20度の温度帯である為、冷凍の過程で細胞が壊れてしまい解凍時にドリップが出てしまい、旨味が損なわれてしまうことが多くありました。しかし、急速凍結機であれば温度帯が-40度になる為、細胞を傷つけることなく冷凍が可能に。その為、解凍時にドリップが出づらく美味しさをキープできるようになり、より多くの冷凍ストックを持てるようになりました。

またチルドの商品に関しても最近では「クックチル」の製造も一般化してきました。真空包装された商品の中心温度を75度以上で1分以上加熱。そして90分以内に3度以下の温度帯にまで冷やすことで、その真空パックの中には菌が発生しない状態に持っていく手法です。これによって、チルド商品ながらよりストックを作りやすくなりました。

しかし、冷凍・チルド両方のストックがしやすくなった一方で、ずさんな在庫管理・棚卸しを行なってしまい、真空パックに入った大量の商品ごと廃棄してしまうことが増えています。

自分たちの適正在庫量は一体どのくらいなのか?フードデリバリーでは約2週間辺りで設定される企業が多いので、そのあたりを参考に自社の適正基準を設けてもらえればと思います。

②歩留まりロス

食材として肉や魚を多く活用する企業で生じやすいケースです。例えば、熟練の職人であれば一匹仕入れたもののうち、骨や筋などを省いて80%活用できるとします。しかし新人であればどうしても食べられる部位の廃棄をしてしまい50%しか活用できないとします。

この例で考えると、食材辺り30%ずつロスが発生してしまうことになります。もちろん歩留まりロスを減らすための教育が大前提ではありますが、発生してしまう歩留まりロスと製造時間を考えると、結果的に処理済みの食材を仕入れた方が安上がりになるケースも多々あります。この辺りは製造工程を任せっぱなしにしているとどんどん見えづらくなるロスなので、しっかりチェックしたいところです。

③商品ロス

商品ロスとは「これ頼んでいません」というものです。イートインだとすぐに作り直すことも可能ですが、デリバリーだと作り直す時間だけでなく、キッチンに戻り再度運ぶというデリバリーの時間が発生するため、できる限り無くしたいロスの一つです。当然ながら商品原価のロスだけでなく、配送人件費のロスも発生しますし、何よりお客様の信頼を失う要因の一つになります。

ネット注文だとお客様との間での「言った・言っていない問題」は発生しづらいですが、電話での注文の場合どうしても「言った・言っていない問題」が残ってしまいがちです。紙ベースで受注管理をしている事業者はより無駄・管理ミスを無くすためにシステム化が必要です。またシステム化の中でも音声を自動録音してくれるサービスもこれからは増えてきますので、積極的に活用していきましょう。

④ポーションロス

フードデリバリーのロスで圧倒的に多いのが、このポーションロスです。これは「1人前は○○gで盛り付けよう」というルールが決まっているにも関わらず、盛り込みメンバーの独自判断でよりたくさん盛り付けてしまうというものですね。

この辺りの改善のため、上述の①廃棄ロスで書いた急速凍結やクックチルを導入する際に保管方法をなるべく1人前のポーションがわかるようにし、盛り付け担当者の恣意性が入らない仕組みを導入される企業も増えてきました。

その仕組みでなかったとしても、盛り込むポーションは徹底させていく。これは自分たちの原価を守るだけでなく、お客様の満足度も大きく左右してしまいます。自社の視点・お客様の視点、どちらで見ても大切なルールとして徹底していきましょう。

⑤商品開発・まかないロス

最後が新商品の開発やまかないに伴って発生するロスです。このロスはどうしても一定数生じてしまいますので、事前に予算化してしまった方が良いです。この予算化なく進めてしまうと、ある月はより多く発生したり、またある月は発生しなかったりとコストが安定しなくなってしまいます。数字が読めないと再現性が持てないため、安定した収益を出すのが難しくなります。ここはしっかりルールを設けて進めていきたいところです。

フードデリバリーを展開していく上で、原価率のキープは非常に重要なポイントです。各種原価・包材共にコスト増加の流れにあるからこそ、管理できる部分はしっかりと管理していきたいですね。

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