コロナ・Go to イートを踏まえた今年のおせち商戦の戦い方

今年もおせち商戦が始まりました。年々各社の販売スケジュールは前倒しされており、9月中旬〜10月初旬には本格的な販売促進が強化されるようになりました。

なぜ各社ここまで力を入れるのでしょうか?その一つにおせちの市場規模の大きさがあります。おせちの市場規模は一般的に「約600億円」と言われています。

この「600億円」という市場規模はどの程度の大きさでしょうか。同じくお届けの視点で他業態と比較してみると、「フードデリバリー:約5,000億円」「寿司宅配:約500億円」と言われています。

これらの市場規模は年間なので、おせちはお正月でのみ利用される商材と考えるとその規模の大きさを感じさせられます。また、かつては「おせちは自宅で自分で作る」という行動でしたが、共働きや核家族化(親戚一同が集まらない)の進行により年末の忙しい時期に準備することも大変なことから「好きな店でおせちを買う」という行動に変化しています。これらの背景から市場規模は横ばい〜微増で推移しているという特徴があります。

このようなトレンドがある上で今年のおせち商戦はどうなるのでしょうか?確実に追い風になっているのは、「コロナ」「Go to イート」の二つです。

まずコロナウイルスの影響もあり、海外旅行に出かける世帯数が減少するため、単純に日本国内に留まる「胃袋」の総数は例年よりも多くなると予想されます。
また、例年海外旅行に使っていた費用が、高単価なおせちの購入のお財布に変わる可能性があります。

さらに、今年の年末年始は混雑の分散化の要望も出ているため、おせちが最も売れる正月三が日はそのまま居住地に留まる世帯数も(立地にもよりますが)多くのエリアで増えるのではと見られています。

売上 = MS × 商圏人口 × シェア

MS:商材別の年間平均消費金額

この計算式で見た際に、コロナの影響によって商圏人口が増えるという点がおせちに限ってはコロナが追い風と言える要因の一つとなります。

次にGo to イート(ゴートゥーイート)です。そもそもGo to eatはおせちに利用できるのでしょうか?改めてGo to イートの振り返りですが、概要としては「オンライン予約でのポイント還元」「プレミアム食事券」の2つです。

オンライン予約のポイント還元はあくまでも店内利用を想定されているため、原則としてはおせち購入は該当されません。(おせちプランという形でオンライン予約に該当される企業も出てきそうではありますが。)

そのため、おせちに該当するのは「プレミアム付きお食事券」です。こちらは購入金額に対して25%を上乗せした金額の食事券として利用できます。これが飲食企業にとっては大きな追い風となります。そもそも、Go to イートは本来は飲食店向けのGo to キャンペーンです。つまり、仕出し弁当やデリバリー専門業、おせち専門業や小売業では該当されません。しかし、プレミアム付きお食事券の利用を上手く取り込むことで、おせち商戦でも優位に戦うことができます。

農林水産省によると、Go to イートのポイント還元は当初確保していた予算の消化により終了間近とのことなので、プレミアム付きお食事券の購入促進も期待されます。

また、おせちの趣味嗜好も市場規模の拡大と共に変化しています。今までは「おせちの縁起物と言えば」という験(げん)を担いだものがお重の中に入っているのが一般的でしたが、今は伝統的なおせちのイメージに囚われることなく「好きなものを食べたい」というニーズも増えているため、和食おせちに限らず、イタリアン・フレンチ・中華・焼肉など幅広いジャンルのおせちが売れるようになりました。

このような流れから、飲食企業にとってGo to イートを掛け合わせたおせち商戦はチャンスと言えます。

しかし、気をつけるべき点もあります。それはおせちはリピートビジネスという側面があることです。年に一回の販売ですし、かつ高額商品になってくるためお客様は「失敗したくない」という思いが強くなります。特にお正月というめでたい晴れの日に失敗体験をしてしまうとショックが大きいため、あまりリスク選好的な購買は行われません。(かつてグルーポンで販売されたおせちが、販売時の写真イメージからあまりにかけ離れた貧相な商品だったことで炎上しました)

そうすると、

・過去に頼んだことがある店(味を知っている)

・元々ファンになっている馴染み店

・有名ブランドの店

このようなお店に集約される傾向にあります。実際、おせちの前年購入客リピート率は平均して30%と高く、人気店に限ってはこのリピート率は50%を超えてきます。

つまり、新規顧客獲得のハードルは高いですが、一度顧客名簿が増え、かつ商品品質が高ければ安定して前年対比で伸ばしていくことが可能なビジネスです。

そのため、如何に既存顧客のファンを増やし早く購入いただくか?おせちは他社で購入すると追加購入がない商材のため、早めの行動が大切になります。

実際、例年であればおせちの販売目標に対して「10月末の予約状況:15%〜20%」「11月末の予約状況:40%〜50%」といった進捗で推移すれば年末に問題なく完売することができます。

しかし今年はこのスピードが驚くほど早く、「10月末の予約状況:30%以上」という数値がコンサルティングでお付き合いしている企業の平均値です。最も進捗が早い企業で既に50%を超えております。

つまり、今から準備では既に遅いのは事実で、すぐにでもプロモーションを開始しなければ胃袋は既にロックされ、競合他社に奪われてしまいます。

繰り返しになりますが、おせちに限っていえばコロナが追い風になっており、Go to イートのプレミアム付きお食事券により加速されております。

その分、競合は多く且つ歩み出しが早い状況です。先手先手で打ち出すことによりしっかりと目標数を達成し、お客様への1年間の感謝を伝えるきっかけとしつつ、自社もしっかりと収益を高める形にしていきましょう。