例年のお盆・夏休み商戦は多くのフードデリバリー企業にとって一気に利益を伸ばすことが出来るチャンスの時期です。東京など「人が出ていく」エリアでは逆に落ち込む傾向もありますが、「人が帰ってくる」立地であれば如何にここで売上・利益の異常値を狙うことが出来るか。これが通年での業績にも大きな影響を及ぼします。
しかし、今年はコロナ禍ということもあり、例年のような盛り上がりを実現することができるのか懸念される状況でした。Go to トラベルもありましたが、外部環境としては気持ちよく消費しづらい環境でしたし、新幹線の乗車率も東海道新幹線の自由席で30〜10%以下に留まったという報道もある通り、実数値としても人の移動が抑制された状況でした。
このような環境下で、フードデリバリーの各社の業績はどうだったのでしょうか?速報値ではありますが、予約型業態・衝動(オンデマンド)型業態それぞれに分けて見ていこうと思います。
◎予約型業態
予約型業態のフードデリバリーとして強いのが、従来の「仕出し業」です。お盆・夏休み期間ではお集まりにも様々あり、下記が例年の特徴です。
初盆・新盆の法事法要 :売筋価格は@2,000円〜@5,000円
夏休みの親族の集い :売筋価格は@1,000円〜@1,500円
お食い初めなどハレの日:売筋価格は@3,000円前後
それぞれのニーズに合わせて広告宣伝を強化していき、売上の異常値を狙っていくのが例年の戦いですが、今年は上述の通りコロナ禍にあるため、戦い方が大きく変わりました。特に今回業績を伸ばした企業の特徴でとしては、「客単価の間口を広げた」これに尽きます。
例年、お盆シーズンは売上が跳ねるのでオーダーミスなどを無くす為に商品数を絞り込む傾向にあります。しかし、今年は法事法要関連は集まる人数が少なく、例年よりもカジュアル化することが想定された為、低単価のお弁当の品揃えを強化しました。具体的には1,200円〜1,500円ラインです。今年は法事法要でもここが大きく伸び、結果的に件数の最大化につながりました。
「売上=件数×注文単価」で見た時に、注文単価は間違いなく下がる流れでした。つまり、件数を如何に最大化できるか?ここが業績アップの分かれ目になる中、昨年対比でプラスに転じた企業は、低価格ゾーンの品揃えを増やしたことで件数を増加を実現しました。逆に例年通りの戦いをした企業は、対象となる顧客数自体が減っていることもあり売上は3割前後のダウンという結果でした。
またお盆期間は「お弁当が売れるエリア」「オードブルが売れるエリア」が分かれるのですが、特に心配だったのがオードブルが売れるエリアです。コロナの影響もあってビュッフェやオードブルが敬遠されがちな傾向にありました。ところが、蓋を開けてみると意外にコロナによる大きな影響はありませんでした。
大人数で、かつコミュニティとして他社と集まるイベントなら敬遠される流れだったと思いますが、今年は基本的に親族の集まりが多く、かつ小規模ということもあり、オードブルを皆で食べるということ自体は敬遠されなかったようです。
まとめになりますが、予約型業態においては「少人数×カジュアル」を狙えたかどうか?ここが大きなポイントでした。
◎衝動(オンデマンド)型業態
プラットフォーム(UBER EATSや出前館など)に掲載して戦う多くの低価格フードデリバリーにおいて、お盆休みも基本的には今までと変わらずに追い風の傾向でした。特に今年は帰省を見送る人も多く、例年では売上を落としやすい都心部でも変わらず大きく売上を伸ばすことができました。
ただ、プラットフォームで売上を伸ばそうとすると、「注文数=表示回数×クリック率×注文率」と分解できる中で、露出が多く表示回数が多い企業は外部環境の伸びを強く享受することができ、逆にプラットフォーム上での表示回数が少なく探してもどこにあるの?という企業ではあまりメリットを享受できなかったようです。改めて、表示回数の最大化の為に、プラットフォーム掲載初動でしっかりと売上を立てることを重視しましょう。
また衝動型のフードデリバリーでも特に良かったのは「ハレ(イベントなど非日常)」「ケ(日常)」の両方を対応できる寿司デリバリーです。元々寿司デリバリーは業態として出来上がっており、市場規模は約500億円と言われていますが、最近はさらに右肩上がりの状況です。しかも、プラットフォームに依存するなく、自社媒体で売ることができる業態ですので、ポスティングを強化すれば売上が伸びる状況にあります。
寿司ということで注文単価も高く、お盆期間は5,000円超えの企業が大半でした。ポスティングの反響率も安定して3%ほどある為、月商1,000万円〜1,200万円を1店舗で狙うケースが多く、目標売上・単価・必要件数・反響率から逆算することで、必要な広告費を算出し、施策を実践することで売上を伸ばしています。
結論として、衝動型デリバリーは全般良かったのですが、「ハレ」と「ケ」の両方を網羅している業態の方が伸ばしやすい結果でした。
目的型・衝動型それぞれにおいて特徴は出ましたが、フードデリバリー自体が活況なのは間違いありません。しかし競合環境も加速度的に厳しくなっているからこそ、自分たちのコンセプトに優位性があるのか?また、獲得できたお客様に再注文いただくリピート対策が取れる仕組みになっているのか。
この2点に重点を置いて事業展開していく必要があります。